グッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法の見分け方

グッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法の見分け方

製靴法が多様化した現代の紳士靴では、その靴が何の製法で製造されたか、見た目で判別することはなかなか難しいと思います。その中でも、紳士靴の代表的な製法である、グッドイヤーウェルト式とマッケイ式の、二つの製法の見分け方を簡単に解説させていただきます。

(文・写真・イラスト/靴のパラダイス

1、構造の違い

a、グッドイヤーウェルト式製法

グッドイヤーウェルト製法の構造
中底と甲革(アッパーとも呼ぶ)、コバ(細革、ウェルトとも呼ぶ)の三つを縫いつけ(すくい縫いと呼ばれる)したあと、ウェルトに表底(本底、アウトソールとも呼ぶ)を縫いつけ(出し縫いと呼ばれる)する製法です。(ご参考:グッドイヤーウェルト製法の詳細
<グッドイヤーウェルト製法の特徴>
製靴部品も多く、作業工程も複雑なため、重量のあるがっちりした靴になります。その分丈夫で実用性が高く、ソール交換などのメンテナンスもしやすいことが特徴です。アメリカ、イギリスなどの紳士靴に多く見られます。

b、マッケイ式製法

マッケイ製法の構造
甲革(アッパー)と中底(ない場合もある)を直接、表底(アウトソール)と縫いつけ(マッケイ縫い、またはアンズ縫いと呼ばれる)する製法です。 (ご参考:マッケイ製法の詳細
<マッケイ製法の特徴>
甲革を直接ソールと縫い付けることにより、返り(屈曲性)がよく、軽量で、馴染むと足を包み込むような履き心地になることが特徴です。ローファーなどのスリッポンシューズ、イタリア靴紳士靴などに多く見られます。

 

2、外観の違い

a、ウェルトの違い

グッドイヤーウェルト製法の靴と、マッケイ製法の靴の写真、ウェルトの違いの比較
写真上が、グッドイヤーウェルト式製法で造られた紳士靴のウェルト外観。
写真下が、マッケイ式製法で造られた紳士靴。
グッドイヤーウェルト式のほうが、ウェルト(コバ)の張り出しが大きいことがわかります。ウェルトとソールが縫われているからです。ただ、グッドイヤーウェルト式でも、ドレッシーさを演出するために、ウェルトをぎりぎりまで削りこまれているものもありますし、マッケイ式でもダミーの縫い目のあるウェルトがついている場合もありますので、ウェルトだけでは区別できない場合があります。

 

b、アッパー(甲革)形状の違い

グッドイヤーウェルト製法の靴と、マッケイ製法の靴の写真、アッパー(甲革)形状違いの比較
写真左が、グッドイヤーウェルト式製法で造られた紳士靴。(写真の靴:PARASHOE コンビウィングチップ
写真右が、マッケイ式製法で造られた紳士靴。
グッドイヤーウェルト式の方が、ソールに向かって強い丸みを帯びています。つり込んだアッパーをすくい縫いすることで、この丸みが生まれます。マッケイ式も丸みがあるため、これだけでは判別は難しいですが、グッドイヤーウェルト式の靴の場合は、履き馴染んだあとまでこの丸みが維持されるのが特徴です。

 

3、縫いの違い

a、アウトソールの縫い目の位置とピッチの違い

グッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法の、縫い糸位置の違いの比較写真
写真は、当店でグッドイヤーウェルト式とマッケイ式で修理した靴2足の写真です。(※靴修理ページ
写真左が、グッドイヤーウェルト式製法の紳士靴のソール。 写真右が、マッケイ式製法の紳士靴のソール。
写真ではわかりずらいかもしれませんが、マッケイ式(右)のほうが、グッドイヤーウェルト式(左)に比べ、ソールの内側に縫い目があることがわかります。マッケイ式はアッパー(甲革)の中底に直接ソールを縫いつけてあるのに対し、グッドイヤーウェルト式は外側のウェルト(コバ)にソールを縫いつけてあるからです。また、縫い目のピッチ(縫い穴と縫い穴との距離)がマッケイ式の方が荒く、グッドイヤーウェルト式の方が細かいのが一般的です。マッケイ式の場合は(ソールを)中底に直接縫うという製法上、あまりピッチを狭めてしまうと、中底が切れてしまう恐れがあるからです。グッドイヤーウェルト式の場合は、(ソールを)ウェルトに縫い付けるという製法上、マッケイとは逆にピッチを狭く(細かく)縫う必要があるためです。

 

b、中底に縫い糸があるかないか

グッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法の、中底の比較写真
写真左が、グッドイヤーウェルト式製法の紳士靴内の中底。写真右が、マッケイ式製法の紳士靴内の中底。
グッドイヤーウェルト式(左)の場合は、本底(ソール)を外周のウェルト(コバ/細革)に縫い付けますので、中底に縫い糸がありません。それに対し、マッケイ式(右)は、中底とソールを直接縫い付けますので、中底に縫い糸(ステッチ)があります。ソールが縫いつけられた縫い糸です。

 

まとめ

以上が、グッドイヤーウェルト式と、マッケイ式を見分ける大きなポイントですが、 実際見た目だけで判別するのは難しいかもしれません。ソールに縫い糸を隠す伏せ縫いが施されていたりすると、アウトソールの縫い目が隠れてしまうため、「3-a、アウトソールの縫い目の位置とピッチの違い」の見分け方ができなくなりますし、マッケイ式でもダミーのウェルトがついている場合は「2-a、ウェルトの違い」の見分けが難しくなります。 ちなみに、筆者は「4-b、中底に縫い糸があるかないか」で見分けることが一番多いかもしれません。