靴屋の独り言(靴や足、ファッションにまつわるジンクス、迷信・言い伝え、靴販売と靴修理で得た知識や雑学)

革(皮革)材料の上に置いた木型(シューラスト)

靴販売と靴修理に携わらせていただく中で得た、知識や情報を紹介いたします。靴や足、ファッションにまつわるジンクス、雑学、迷信・言い伝えなど。独り言のようにつぶやきます。

靴や足にまつわる迷信や言い伝え、ジンクス
 ・夕方や夜に新品の靴を履きおろすと縁起が悪い!? 
 ・足指の人差し指が、親指より長いと将来親より出世する!?

製品(靴)について
 ・革靴の踵(かかと)にある穴について
 ・靴のサイズについて
 ・ウェルトのつなぎ目について
 ・インジェクションモールド式製法の靴について
 ・履き口のシワや革切れについて
 ・サービス品の靴クリームについて

靴の修理について
 ・ロックステッチについて

(文・写真/靴のパラダイス店長 大嶋信之


靴や足にまつわる迷信や言い伝え、ジンクス

夕方や夜に新品の靴を履きおろすと縁起が悪い(災いが起こる)!? 

靴底(ソール)にわざと汚れを付けたり、バッテンマークを書く理由とは

靴の裏(靴底・ソール)にバッテンマークをペンで書く写真(わざと汚れを付ける)

以前、靴屋の店頭であらゆる靴を販売していた頃、靴を購入いただいたお客様が、履いてきた靴を破棄して、買った靴をその場で履きおろすことも多かった。それが夕方や夜の場合では、「靴底にボールペンで×(バッテン)つけて」とお願いされることが多々あった。そのたびに理由を尋ねると「夜に新品の靴をおろすのは縁起が悪い(災いが起こる)から、わざと汚せば新品じゃなくなる」といった理由を言われるお客様がほとんどだった。
そのような言い伝えの理由って何でなんだろうと、ずっと思っていた。
今でもその明確な理由はわからないのだが、昔は靴は舶来物で高級品だったこと、道は現代のように舗装もされておらずつまづいたり転びやすかったこと、しかも電灯も少なく暗い夜道ではなおさらのこと。また、現在の靴と違って靴底も滑りやすい素材や形状だったことなどが影響していると推測している。
靴底に傷を付けるというのは、滑りやすいソールにわざと傷を付けて滑りにくくしたのかもしれない。革底なら新品時は滑りやすいので納得がいく。「傷を付ける→ペンで汚れを付ける」に変化したのかもしれない。
このジンクス(迷信)については、以下のサイトの記事に詳しく書いたので、よろしければご参照ください。

■shoepara(シューパラ)>午後(夕方や夜)に新しい靴を履きおろす時のおまじない。新品の靴底(ソール)をわざと汚したり傷をつける。


足指の人差し指(示趾・第二趾)が、親指(母趾・第一趾)より長いと将来親より出世する!?

足指の人差し指(第二趾)が、親指(母趾・第一趾)より長い足の写真

足の指を「足指(あしゆび)」とか「足趾(そくし)」と呼ぶのだが、「示趾(しし)」と呼ばれる人差し指(第二趾)が、「母指(ぼし)」と呼ばれる親指(第一趾)より長い人は、将来親より出世するという言い伝えがある。
親指(第一趾)を親に、人差し指(第二趾)を子供に例えた、おもしろい迷信のひとつだ。

足指(つま先)の形の3つのタイプ-エジプト型、ギリシャ型、スクエア型

上の図のように、足(指先・つま先)の形には、大きく分けて3つのタイプ(エジプト型、ギリシャ型、スクエア型)がありますが、ギリシャ型の方は親より出世しやすいということになる。(関連記事:足のかたちのタイプ


製品(靴)について

革靴の踵(かかと)にある穴について

革靴の踵(かかと)にある穴

革靴(ビジネスシューズ・紳士靴)を、長く通信販売(ネット通販)させていただいておりますが、お客様から意外と多くいただくお問い合わせのひとつが、踵(かかと)に開いた小さな穴についてです。
穴は、両足の踵に開いており、非常に小さく、貫通しています。
「不良品なのでは?」と思われ、お問い合わせをいただくことが多いです。
また、その穴が商品タグやプライスタグ(値札)などの下げ札を付けるのに利用されていることから、そのために開けられた穴だと勘違いされがちですが、実は製造時に開けられた穴で、製品完成時からもともと開いている穴なのです。
この、かかとの穴のことを靴業界では「タックホール」と呼んでいます。

革靴の釣り込み工程
職人による「釣り込み」工程の様子

タックホールは、靴製造(製靴)の工程の中の「釣り込み」と呼ばれる、革靴のアッパー(甲革)を木型に入れて引っ張りながら釘で留めていく作業時に、アッパーの踵部分を木型に仮留めすることでできる穴です。
ですので、タックホールのある靴というのは、職人が一足一足手作業で製造した靴にしかなく、不良品ということでもありませんし、むしろ大量生産ではない高級紳士靴に多くみられる穴なのです。
なお、「タックホール」という呼ばれの所以は、靴業界では、釘(くぎ)のことをタックスと呼ぶことが多いので、タックスでできた穴(ホール)「タックス+ホール」という意味でからだと思われる。
タックホールについては、下記のページで詳しく説明していますので、よろしければご覧ください。
革靴の踵(かかと)に開いた穴「タックホール」のついてのお話

■関連ページ
靴に下げ札(商品タグや値札)を付ける方法

靴に下げ札(商品タグや値札)を付ける方法
靴に商品タグや値札(プライスタグ)などの下げ札を、機械を使わず手で付ける方法を説明します。


靴のサイズについて

通信販売(ネット通販)で永く靴(シューズ)を販売する中で、一番頭を悩ませるのが靴のサイズについてです。なぜなら、ナイキ(NIKE)やアディダス(adidas)、コンバース(Converse)、ニューバランス(newbalance)といったナショナルブランドのスニーカー(スポーツシューズ)のサイズ表記と、国内のJIS規格(日本工業規格)による革靴やパンプスのサイズ表記が、同じサイズでも実際の大きさ(サイズ感)が異なるためです。

レディースのニューバランスのサイズ表記「US6、UK5.5、EU38.5、JP24」

写真は、レディースのニューバランスのサイズ表記です。
「US6、UK5.5、EU38.5、JP24」とあります。
JP24とは、24.0cmを意味しますが、この値が示すものはスニーカーの各メーカーによって異なり、足の全長を示すわけでもなく、靴内の大きさとしては小さい場合があります。
実際、この靴では、足長が233mmの足の女性が履いてちょうど良い~ややゆとりあるといった具合です。
一方、JIS規格では、その靴を履いてちょうど良い足の全長を表記すると定められていますので、このニューバランスの靴のJISサイズは23.5mになります。
実際、同じ女性が履くパンプスのサイズは「23.5cm」です。国内メーカーのパンプスも革靴と同じJIS規格に基づいたサイズ表記になります。学校で購入する上履きやローファーもJIS規格です。

次にメンズを見ていきましょう。

メンズのVans(バンズ)スニーカーのサイズ表記「US11、EU45、JP29」

写真は、メンズのVans(バンズ)スニーカーのサイズ表記です。
「US11、EU45、JP29」とあります。
レディース同様、JP29とは29.0cmを意味しますが、この値が示すのは足の全長でもなく、靴内の大きさとしては小さいことがあります。
実際、このシューズは足の全長(足長)が275mmくらいの男性が履いてちょうど良いです。
同じ男性が履く革靴(JIS規格)は27.0cmか27.5cmです。ですので、このバンズの靴のJISサイズは27.5cmとなります。
このサイズの差(スニーカーサイズとJISサイズ)はレディースが0.5cmだったですが、メンズだと1.5cmに広がります。私の経験値だと、サイズが大きくなると、この差も大きくなる傾向があります。
この差は何なのでしょうか?

足と捨て寸の図

この差が生じる原因の一つは、「捨て寸(すてずん)」と呼ばれる歩行時(蹴り出し前の屈曲時)に、足が靴の前にズレ込むのに必要な余裕分を、サイズに含めるかどうかだと私は思っています。
(もう一つの原因として考えられるのは、もともとインチサイズだった靴をセンチメートルに変換する際に生じる誤差かもしれません。それについては、今後調べたいと思っています。ここでは捨て寸についてだけ触れておきます。)

スニーカーサイズと革靴サイズ(JISサイズ)

スニーカーのサイズ表記は、この捨て寸を含めたサイズ表記と言ってよいでしょう。
一般的な捨て寸は、私の経験値では1.0cm~1.5cm程度が多いと感じています。
一方、革靴サイズ(JIS規格)は足の全長を表記しています。
以上より、スニーカーサイズとJISサイズとでは、捨て寸の分だけ差が生じることになります。

例)スニーカーサイズ「27.0cm」=革靴サイズ(JISサイズ)「25.5cm~26.0cm(足の全長)」

このサイズの差は、サイズが小さくなれば少なくなり、サイズが大きくなれば比例して大きくなる傾向があります。足の大きさによって、歩行に必要な捨て寸が異なるためです。
また、メーカーによっても捨て寸の取り方(計算方法)が異なることから、スニーカーのブランド(メーカー)によって、同じサイズ表記でも大きさの差が生じることがあります。

革靴を初めて購入される場合は、以上のサイズの差を頭に入れてご購入されるとよいと思います。
ご参考までに、ご自身の足の全長をぜひ測ってみてください。
「足の全長サイズ」=「革靴のサイズ」がサイズ選び目安となります。→ 足のサイズを測定する

また革靴の場合、つま先のデザインによって、靴の全長も大きく異なってきます。つま先の長いデザインの革靴では、歩行に必要な捨て寸(1~1.5cm)に加え、デザイン上の余裕が加わるため、靴の全長はより大きくなります。

【まとめ】
以上より、私は子供たちの学校での健康診断(できれば大人の健康診断にも)に、身長・体重に加えて、ぜひ「足長」計測を加えていただきたいと思っています。子供たちが自身の足の長さを知ることは、自分たちの成長を知る機会にもなりますし、靴選びにおいてもとても重要だと思います。また、子供だけでなく親御さんも我が子の足長を把握することで、今履かせている上履きやローファー、運動靴やスニーカーのサイズが合っているかどうか確認するきっかけにもなります。
子供は、年齢が幼いほど、足に痛みを感じにくく、靴がきつくても痛がらない傾向があります。サイズが小さい(きつい)まま履き続けてしまうと、足が変形してしまい、将来(大人になってから)の健康を害する恐れもあります。また、逆にサイズが大きい(ゆるい)靴を長く履き続けるのも、足によくありません。サイズを下げるか、インソールで調整するなどの対応が必要です。
年に一度の健康診断に「足長」測定を加えることで、以上のような靴が原因の弊害を予防し、靴選びの目安としても役立ちます。

先にも述べたとおり、
足長=上履き、ローファー、革靴のサイズ の目安
であり、
足長+捨て寸(0.5cm~1.5cm)
がナイキやアディダスといったスニーカーやスポーツシューズのサイズの目安になります。

私が靴屋で接客してきた経験ですと、ご自身の足長を把握している方はごく少数です。
まず、自身の足長を知ることが、将来にわたる靴選び、および足の健康、ついては将来の健康寿命に繋がるのではないかと思うのです。
今後、最適な器具の探求と共に、行政にも訴求していく所存です。
(関連記事:「足長計測を健康診断に加えたい!」推奨プロジェクト

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ウェルトのつなぎ目について

靴を通販でご購入いただいたお客様より、たまにお問い合わせいただく事例として、ウェルトのつなぎ目についてがあります。

グッドイヤーウェルト式製法で作られた紳士靴(革靴・ビジネスシューズ)のウェルト(細革・コバ)のつなぎ目
(画像の靴:British Classic 本革底 ウィングチップ グッドイヤーウェルト式

上の写真は、グッドイヤーウェルト式の紳士靴(革靴・ビジネスシューズ)ですが、内側(土踏まず側)のソール上部に、つなぎ目のような隙間があります。これを見たお客様が「コバが割れている」とか「ソールが割れている」などとお問い合わせいただくことがあります。またこの位置が左右で違うというご指摘をいただくこともあります。

グッドイヤーウェルト式やハンドソーンウェルテッド式で用いられる細革(ウェルト・押渕)
(画像の商品:本革スリットウェルト

実は、このつなぎ目は、ウェルトという写真のような「細革(ほそかわ)」とか「押し縁(おしぶち)」と呼ばれる一本のパーツを巻いたつなぎ目なのです。
底付け(ソール装着工程)の前に、この細革をアッパーに固定(グッドイヤーウェルト式の場合は「すくい縫い」という方法で縫い付けます)したうえで、ソールを装着します(グッドイヤーウェルト式の場合は、アッパーに縫い付けたこの細革にソールを「出し縫い」という方法で縫い付けます)。
職人による手作業での工程のため、左右ぴったり同じ位置ではない場合もございます。

セメント(接着)式の紳士靴(革靴・ビジネスシューズ)のウェルト(細革・コバ)のつなぎ目

上の写真は、セメント(接着)式の紳士靴(革靴・ビジネスシューズ)です。
セメント式やマッケイ式でも、ウェルトのある靴には、このつなぎ目があります。(ウェルトのないソールや、出来合いのソール、インジェクションモール式のようなソール形成方式で作られた靴には、このつなぎ目はないです。)

セメント式やマッケイ式で使われるウェルト(細革・押渕)
(画像の商品:本革ウェルト ステッチ付き ギザあり

写真は、セメント式やマッケイ式で使われるウェルトの一例です。
ギザギザになっている箇所を、アッパーに接着したうえでソールを装着します。(マッケイ式の場合は「アンズ縫い」または「マッケイ縫い」と呼ばれる方法でソールをアッパーに縫い付けます。)

以上ですが、伝統的な本格派紳士靴には、大抵このつなぎ目が見られます。
靴修理でにおいてマッケイ式やブラックラピド式でオールソール交換する際に新たにウェルトを設置した場合でも、同様のことが言えます。


インジェクションモールド式製法の靴について(特徴と見分け方)

インジェクションモールド式の構造図
(イラスト/シューフィル百靴事典」より)

インジェクションモール式製法とは、出来上がったアッパーを金型にはめ込み、ゴムを流し込んでソールを形成する製法です。
革靴(ドレスシューズ・ビジネスシューズ・紳士靴)やカジュアルタウンシューズ、スニーカーなど最近の靴(シューズ)で多く見られるようになりました。
ソール形成と圧着を同時に行うことができ、靴の製造にかかる時間を大幅に短縮できるうえ、靴の各サイズの金型を一度作ってしまえば、あとはゴムの原材料費だけでソールを形成することができるため、サイズ別にソールを手配する手間を省けるだけでなく、初期費用は大きくかかりますが将来的な製造コストを大きく抑えることができ、大量生産に向いている製法のひとつです。
また、接着剤を使わずに、溶かしたゴムを流し込んでアッパーにソールを形成装着できるため、ソールのデザイン(形状)の自由度が高く、かつ、非常に防水性の優れた靴が出来上がります。変わったデザインのソールや、防水シューズのほとんどは、このインジェクションモールド式と言ってよいと思います。
ただ、同製法の靴のソールが磨り減り修理する場合、ヒールにゴムを足したりする修理はできる場合がありますが、ソール形状によってはオールソール交換修理には向かない場合も多いです。(ソール形状と接着面が通常の靴のように平らな感じならソール交換修理が可能ですが、変わったデザインのソールやアッパーを包み込むような接着面だった場合は、ソール形状の復元が難しいためソール交換ができないことがあります。)

インジェクションモールド式は、金型でソールを形成するため、見た目に以下のような同製法独特の特徴を見ることができます。それらの特徴を見ることで、セメント式(出来合いのソールを接着する方式)なのか、インジェクションモールド式で造られた靴なのか、見分けることができます。

インジェクションモールド式製法の靴にあるソール中央部の線状の突起

まず、代表的な特徴として、ソールのつま先のセンター(中央)部分に、線状の細い線(突起)が見られます。

インジェクションモールド式製法の靴にあるソールのヒール中央部の線状の突起

ヒールの中央(センター)にも同様の線(突起)があります。
これは、ソール形成した金型のつなぎ目の跡です。
インジェクションモールド式の金型は、左右のパーツに別れており、それを挟んで靴に固定しゴムを流し込みます。
そのため、同製法の靴のほとんどに、ソール(およびヒール)中央部にこのような線状の突起を見ることができます。これが、同製法で作られた靴だと、一番見分けが付くポイントになるかと思います。

インジェクションモールド式製法の靴にあるソール中央部の丸状の突起

次に、ソールの中央部分に、写真のような丸状の突起がある場合があります。

インジェクションモールド式製法の靴にあるソールのヒール中央部の丸状の突起

ヒール中央にも同じような突起がある場合があります。
これは、金型にゴムを注入したときの穴の跡です。
ゴムを流し込んでソールを形成する、インジェクションモールド式独特の特徴です。

インジェクションモールド式製法の靴のコバ(ウェルト)のバリ

もう一つ、インジェクションモールド式の特徴として挙げられるのは、コバ(ウェルト)上部のバリです。
ソールはコバ(ウェルト)ごと一体で金型で形成するため、ソール(金型)の端にあたるウェルト部分にバリが生じる場合があります。これは、本物のウェルトを巻くグッドイヤーウェルト式(またはハンドソーンウェルテッド式)やマッケイ式(ウェルト付き)などではありえない特徴です。

以上3つは、本製法独特の特徴で、他の製法にはない特徴になりますので、製法を見分ける際の参考にしてみてください。


履き口のしわや革切れについて

ドレスシューズ(革靴・ビジネスシューズ・紳士靴)は、スニーカーなどと違って、足にぴったりフィットする木型で作られています。(スニーカーは、少しゆとりある木型で作られている場合が多いです。)
ですので、正しい履き方や脱ぎ方をしないと、靴に負担がかかり、靴を痛めてしまう原因になります。

ドレスシューズ(革靴・ビジネスシューズ・紳士靴)の踵(かかと)によったシワ

写真は、本革製のビジネスシューズの踵(かかと)部分によったシワです。
靴べらを使わず履くと、このようなシワが入ってしまいます。
シワは元には戻すことができません。また、そのような履き方を繰り返すうち、踵部分に入っている月型芯という硬い革のパーツも型崩れを起こし、踵部分の形も崩れ、履きにくくなってしまう恐れがあります。月型芯は、表革と裏革(ライニング)の間に挿入されている部品ため、交換が難しく修理ができないことが多いです。

ドレスシューズ(革靴・ビジネスシューズ・紳士靴)の履き口(トップライン)の踵(かかと)の革切れ

写真は、本革製のビジネスシューズの踵の履き口に生じた革切れ部分です。
紐をほどかず履いたり脱いだりすると、このように革が切れてしまうことがあります。
また靴べらを使わず、指で履こうとしたりすると、履き口に負担がかかり、このように切れが生じたりします。合皮(合成皮革)の靴でも、本革の靴でもこのようなことは起こります。
紐タイプの革靴を履くときは、必ず紐をゆるめ、靴べらを使って履くようにし、脱ぐときも紐を緩めてヒールを手で掴んで脱ぐようにしましょう。
詳しい履き方と脱ぎ方は、以下のページをぜひご参考ください。


サービス品の靴クリームについて

サービス品の靴クリーム

当店で靴(シューズ)を通販でご購入いただいたお客様には、靴クリームまたは靴クリーナーを創業当初よりサービスでお付けしています。
その靴クリームと靴クリーナーは、創業90年を超える老舗国内靴クリームメーカーのもので、信頼の品質を誇る国産品(日本製)になります。
靴クリームは、皮革に最適な割合で調合された油と水分をペースト状にした乳化性クリームで、靴クリーナーもシミになりにくいペースト状の乳化性クリーナーになっています。
靴クリーム(および靴クリーナー)の詳細と使い方(靴のお手入れ方法)については、以下ページに掲載しましたのでよろしければご覧いただけると幸いです。


靴の修理について

ロックステッチについて

靴の修理サービスを永く提供させていただく中で、よくいただく質問が、「ソール(靴底)を縫ったステッチが擦り切れてしまったら、ソールが剥がれてしまうのではないか?」といったご質問です。
結論からお答えしますと、ソールは剥がれることはないのでご安心ください。

ロックステッチ-ソールの両側から交差縫い

なぜかというと、マッケイ式グッドイヤーウェルト式ブラックラピド式ステッチダウン式といった、マッケイ(アンズ)縫い出し縫いでソールを縫い付ける製法で修理(ソール交換)する場合の縫い付け方式が「ロックステッチ」と呼ばれる、ソールの両側(靴内側と地面側)から二本の縫い糸を絡めながら縫うためです。そのため、地面側のステッチ糸が擦れて切れたとしても、もう一方側の糸は切れていないので、縫いがほつれることはなく、ソールは剥がれることはないです。
また、ソールを縫い付ける前には、しっかり接着も行っていることが多く、たとえ両方のステッチがほつれたとしても、簡単に剥がれるといったこともありません。

グッドイヤーウェルト製法の出し縫いステッチが切れている様子

上の写真は、グッドイヤーウェルト式の紳士革靴の地面側の出し縫い糸が、擦れて切れている写真です。こういう状況になっても、ソールは剥がれていません。もう一方(ウェルト側)のステッチが健在だからです。ちなみに、歩行時に一番擦れやすいのはソール中央部であって、縫い糸の箇所(ソールの端部分)は擦れにくい場所なので、糸が簡単に擦り切れるといったことは少ないです。

グッドイヤーウェルト式製法の底面(ソール側)の出し縫い糸(ステッチ)が切れてほつれている状態

写真は、グッドイヤーウェルト式製法の紳士靴の底面(ソール側)の出し縫い糸(ステッチ)が切れてほつれている様子です。

グッドイヤーウェルト式製法のウェルト側(コバ)の出し縫い糸(ステッチ)はほつれていない

同じ箇所の対のウェルト側の出し縫い糸(ステッチ)。
全くほつれておらず、ソールも剥がれていません。
ウェルト側(上部)の糸と、底面(ソール)側(下部)の糸は別々で、二本の糸がソール内で綾かけのように縫われているためです。